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第74回正倉院展

第74回正倉院展が10月29日よりはじまっています。

毎回毎回多様な御物に接する機会を頂けることに感動し続けておりますが、今回私が深く心を動かされたのが明治の人々が御物を修理された軌跡、その卓越した技術と熱意に対してでした。

今回のポスターに採用されている漆背金銀平脱八角鏡(しっぱいきんぎんへいだつのはっかくきょう)。金や銀の薄い板で切り抜かれた鳥、蝶、植物の繊細でリズミカルな美しさにいつまでも見とれてしまいます。金銀の平脱は漆器の中でも最高級の技術と素材を必要とされるものです。ガラスケースの前でこの鏡に対峙し、この鏡を作ったであろう大陸の職人のこと、遣唐使船に乗って大陸から聖武天皇のもとへ渡ってきたその苦難の旅路、と想像しているだけで自分も時空を超える旅に出たような気がいたします。

こちらの鏡は鎌倉時代に北倉から盗み出され、細かく割られてしまったのだそうです。幸い盗人はつかまりその破片も回収され正倉院に戻されます。以来、ずっと破片のまま眠っていたものを明治二十七年(1894)に銀の鎹(かすがい)で繋ぎ留められ補修されて当初の姿を取り戻しました。鎌倉時代に失われた姿が明治に取り戻され、令和の我々の眼前に現れる。御物が時を超えた人々の思いをつないでいく。これぞ奇跡ですね。

他にも沈香木画双六局(じんこうもくがのすごろくのきょく)や檜長几(ひのきのちょうき)の床脚も明治三十年代に補われたものだということです。天平時代の御物修理に取り組まれた明治時代の熱意を感じることができました。

正倉院御物は当たり前にそこに存在するのではありません。時を超えてその時々の人々が真心を込めて大切に保存してきたからこそここにあります。その長い長い営みに触れる度、奈良で日々を営む基本の姿勢が正される。毎年そんな気持ちで通わせていただいております。

当館ロビーでは過去の正倉院展図録もご用意しております。昭和50年代から現在に至る図録の背表紙を眺めるだけでもわくわくいたします。お気軽にお手に取ってお楽しみくださいませ。

 

■第74回正倉院展■

会期:令和4年(2022)10月29日(土)~11月14日(月)(会期中無休)

会場:奈良国立博物館東新館・西新館

開館時間:午前9時~午後6時 金・土・日・祝日(11/3)は午後8時まで

※入館は閉館の60分前まで

観覧料金:一般券2,000円/高大生券1,500円/小中生券500円

観覧には「前売日時指定券」の予約・発券が必要です。

事前予約のみで当日券の販売はありません。

前売日時指定券は、ローソンチケット[Lコード:58885]、ローソン及びミニストップ各店舗、電話受付(TEL:0570-000-028)、または公式サイト<https://l-tike.com/>)でお求めください。

 

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